日本が直面する最大の課題は少子高齢化。国としても多方面から支援策を講じているが、なかでも育児休業制度は「制度はあるが、現実には使えない」と感じる家庭が少なくない。
本稿では、育休取得が家計に与えるインパクトを**「手取りベース」で3つの水準に分けて徹底比較**。制度の“見かけの手厚さ”と“実際の生活への影響”のギャップに迫る。
前提条件とモデル世帯
30代夫婦/夫:年収400万円(ボーナス4か月)、妻:年収350万円(同)
→ 通常時の世帯手取り年収:約612万円
ケース①|夫婦ともに育休を1年間取得(育児休業給付金のみ)
月数 | 支給率 | 支給額(月合計) | 年間手取り合計 | 通常との差額 |
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1〜6か月 | 約67% | 約27.9万円 | 約167.4万円 | ▲191.4万円 |
7〜12か月 | 約50% | 約20.8万円 | 約124.8万円 | ▲233.2万円 |
合計 | — | — | 約292.2万円 | ▲約320万円 |
収入減:▲約52%
👉 育休を「夫婦で取る=生活困難になる」構造がここに
💼 ケース②|夫のみ勤務継続、妻のみ1年間育休取得
項目 | 手取り年収 |
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夫(通常勤務) | 約368.6万円 |
妻(育休給付) | 約136.2万円 |
合計 | 約504.8万円 |
収入減:▲約107万円(▲約17%)
👉 夫が働き続けることで収入減は緩和。ただし、ボーナス不支給や支出増に備えは必要
👨👩👧 ケース③|夫婦とも通常勤務(育休なし)
世帯手取り年収 | 約612万円(基準) |
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🔍 分析:見えてくる制度設計の盲点
🎯 問題点
- 支給額が月収ベースでボーナスが反映されない
- 給付率が途中で下がり、育児が重なる後半こそ支援が乏しい
- 実効性ある育休取得には、“取れる設計”が不可欠
🛠️ 提案視点
- 支給額を年収ベースで再設計し、変動給にも対応する
- 支給率は後半も維持するか、むしろ上げるべき
- 給付外となっているボーナス分も一部反映させる仕組みが必要
💬 結論:育休取得を推奨するなら、「生活できる制度」が先
「育休を取りましょう」と掲げるだけでは足りない。家計に現実的なインパクトがある制度設計と、取得後の生活維持への補完があってこそ、少子化対策としての意味を持つ。
利育休制度の課題は“産んだあとの生活”にこそ潜む。これを見つめ直すことが、真の出生支援への第一歩だ。
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/ikuji/